◆◆ もにゃもにゃ ◆◆




「まっ………ちょっ、待って!」
悲鳴に、北見は眉を顰めた。
テルはその隙に胸を押して北見を首筋から引き剥がそうとするのだが、なかなかうまくいかない。
覆いかぶさってくる体はひと回りも大きくて、背後はベッドに阻まれているのだから他には逃げ場はないと言うのに、必死に逃れようともがくテル。
その姿に苛立ちを感じた北見の短い舌打ちが耳に届いたかと思ったら、次の瞬間には口付けられていた。

「〜〜〜〜 ッ !!!!!!」
強引なキスはいつもより濃く、深く、テルの口内を探ってくる。

飲み込み切れなかった唾液が口の端から零れるころに、北見はようやくテルを解放した。
すっかり力の抜けてしまったテルが息を整えているところに、北見はシャツの裾からするりと手を差し込でくる。そしてそのまま腹から胸までを撫で上げられると、背中がぞくりと粟立った。

「……ゃ……、ま 待って、待って
 ……待ってください……」

肌から伝う、北見の指の感触を総毛立つほど敏感に感じながらも何とか身を捩って逃れると、案の定、不機嫌そうな眉間の皺が覗いた。

「……何なんだ」
唾棄に似た強さの声に、テルは身体を震わせる。そのまま肩をすぼめて俯いてしまったので、北見は尚のこと苛立たずにはいられなかった。

北見にしてみれば、一度ついた火を消さずにいられないほど青臭くはないが、処女でもない相手とそう言う駆け引きを楽しむつもりはなかったし、テルが最初からその気でいたことには確信があった。
今更、何を待つ必要があると言うのか。

萎縮して黙りこくっていると、北見が嘆息を吐くのが聞こえた。

それから幾分柔らかな声音で、
「どうしたんだ?」と問われて、ようやくテルは重い口を開く。

「あの……
 じ、自分で、服 脱ぐ、から……
 ……待って ください………」


「…………………は?」


「……だっ て……いっつも、オレ……
 北見に脱がして もらって、るか……ら……
 ………いっつも、なんか、『してもらう』ばっかで……
 オ、オレだって………って……」

そう震える声で呟きながら己の胸元のボタンを外そうとするのだが、なぜか上手くいかない。齟齬の噛みあわない両手が、信じられないほど震えていることにも焦りを感じて、テルはくそっと漏らす。

「テル」

呼びかけに反射的に顔を上げると、目蓋に口付けられた。

「ちょっ、ちょっと……
 あとちょっとだけ、待って……!」

しかし懇願空しく腰に手を回され、そのまま押し倒されてしまう。

「北見センセ……!」
「お前に任せていたら、それこそ夜が明ける」
「そん……ッ!」
「後でちゃんと挽回させてやるから、せいぜい頑張れ」
「………バン……?」
「しっかり頑張れよ」

覗き込んでくる北見の表情は見惚れるほど晴れやかで、その時のテルには、彼の笑みに含まれている毒には気付けなかった。



この日以降、テルが積極的に脱衣を始めたとか何とか………








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北見オヤジ説(そんなん、最初からですよ)。