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荒い息と熱。

首をねっとりと舐め上げて唇で口付けた後、柔いところを甘噛みされる。
あ、と思う間もなく、服の裾から侵入した指は腹をひと撫でして、胸をまさぐりだす。乳首は、摘まれるより潰される方が好きって教えた方が良いかもな、ちょっと痛いし。
少しの刺激で硬くなった乳首を、マニュアル通り指の腹でぐりぐりと弄られる。

「……っ!」

俺は息を詰めて跳ねたってのに、当のスコールは首への愛撫に夢中で気づいてないのか、反対の乳首にとりかかっている。こいつはもー。

大体、襟も緩めずベストも脱がせずじゃ、インナーのたくしあがる限界なんていいとこへその上だし、差し込んだ腕の動きだって狭まるだろ。
必死なのは分かるけど、地面に直に押し倒す前に、スマートに服を脱がせらんなかったのかと呆れる。お預け喰らって待てができない犬じゃねんだから。犬ってか獅子だっけか。
まあ、それこそ動物の本能って感じで、命に関わる動脈に近い場所に歯をたてられると、俺は下手に身動きがとれなくなる。

こう言うことを始めてスコールから求められた回数は少ないけど、こいつ噛み癖あるんじゃないかと思う。回数を重ねるごとに、興奮の度合いに比例して肌に歯をたてる数とちからが増してるような気がする……
噛み癖なら早いうちにとかないとなーなんて考えてる間にも、首と胸の刺激に痛みが混じってきて、そして厄介なことに、人間の本能は微弱の痛みを、興奮を招く刺激にすり替えてしまうんだ。

かぶりと少し遠慮のないちからで首を噛まれた瞬間にうっかり飛び出した嬌声は、自分のみならずスコールの動きも止めた。

「……」
一端俺を見下ろしたスコールは、上体を起こしてジャケットを脱ぎ捨てた。俺も慌てて上着を俺が脱ぎ始めるが、終わるか終わらないかのうちに待ちきれないとばかりにスコールが覆い被さってきた。

おい、まだ腕!

「ジタン……!」

俺はまだ腕に服が絡まったまま、スコールに押し潰されるかたちでキスを受け入れる。咄嗟に口を開けてなかったら、また歯がぶち当たって痛い目見るとこだった。

口付けと同時に、咥内を舌で抉るように蹂躙されて息苦しさに頭をひいてしまうが、逃げたことで一層スコールの情欲を煽ってしまったらしく、両腕でがっちりと捕らえられて今度こそ身動きが取れなくなった。

あーもー! がっつき過ぎだばか!

歯列をなぞって、舌を捕まえて、甘噛みする。唾液すら勿体ないと言わんばかりに吸い上げる熱烈なキスは、こんな時でないと絶対にやらない。こんな風にタガを外して自分のやりたいように舌を絡ませてくるスコールを可愛いとは思うものの、はっきり言ってこう言うのはあんまり好きじゃない。
最初の頃はそれこそ固まったマグロだったくせに、ちょっと仕込んだらこの有様。

大体、スコールは普段から自分に対する理性が強すぎる。こう言う欲望を自分の中に強く押し込んでしまってるから、爆発すると抑えがきかなくなる。性格もあるんだろうけどさ、少しは我慢を覚えさせなきゃ、ちっとも楽しめないじゃないの。

方法と結果を知ってるだけじゃただの自己満足だ。
二人でやるんなら、手順と経過もちゃんと覚えてもらわないとな。

俺は何とか身を捻って、背中から逃がした尻尾でスコールの腕をばしばし叩く。抗議が通じたのか、名残惜しそうに舌が開放されるが、依然唇は触れたまま。お互いの呼吸が相手に飲み込まれそうな距離で呟く。
「腕、痛い……」

そこでやっと、スコールは俺の無理な体勢に気づいたようだ。
俺の身体を抱き直して、背中側に回った腕から服を抜き取る。本当、遅い。

気を取り直して自由になった腕をスコールの首に回してキスを仕掛けるも、あっちは何だか勢いを殺がれてしまった様子。さっきまでのがっつきぶりを反省したってところか。まあ、あくまでも消極的に舌を絡ませてくる辺り、まだまだヤル気はある辺りは成長したよな。
それでも、たった一瞬で叱られた犬みたいにしおらしくなっちまうもんだから、おかしくってたまんねー。ってもここでうっかり笑ったりすると今度こそ完璧に萎えちまうから、優しく、やさーしく、慰めてやりましょうかね。

ちゅっ、ちゅっ、と音を立ててバードキスを繰り返して頬をすり寄せつつ、ぴったりと密着するように裸同士の胸も擦り付ける。

「スコール」

耳元で囁いて、俺もまたスコールの左の首筋に吸いついてやる。そして顔を上げると、ほら元通り。
あっと言う間に唇と主導権が奪われて、さっきよりは若干丁寧な手つきで愛撫がはじまった。

「……ん」

ホント、単純で可愛い。

基本的にスコールの体温は俺よりも低くて、いまも触れられる指から感じる温度はそんなでもないのに、触られた箇所に痛いほどの熱が生まれる。

「灼かれる」って、こう言う感覚なのかもな。

クールダウンを挟んだせいか、勇み足だった欲情がじわじわと焦がすように熱を上げていく。それは、直接興奮を示す熱にもなる。

あ、もう止まんねーわ、と浮かされ始めた頭がぼやく。

キスが深くなると、理性はあっと言う間に劣情に乗っ取られる。とは言え、スコールは俺より大分前に手放してしまっているようで、いつもの険しい眼差しはどこへやら。いつもクールぶってる蒼い瞳は欲情に溺れて、押しつけられる下半身は布越しにすら熱くて固い。

欲しい? と尋ねた声に、スコールが喉を鳴らした。

……やべ、その顔でイきそう。

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